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ベズビオ山噴火犠牲者から2000年前の脳細胞、保存状態は良好

【10月8日 AFP】2000年近く前に起きたベズビオ山(Mount Vesuvius)の噴火で命を落とした若者の遺体から、脳細胞が極めて良好な保存状態で見つかった。イタリアの研究でこのほど、明らかになった。

 ガラス化した状態で保存されたこの神経細胞構造は、イタリアの古代ローマ都市ヘルクラネウム(Herculaneum)の遺跡で発見された。ヘルクラネウムは西暦79年、ベズビオ山の噴火で降り注いだ火山灰にのみ込まれた。

 研究では、この噴火の犠牲者の遺体から採取したサンプルを詳細に調べた。犠牲者は20歳前後の男性で、遺体は木製のベッドに横たわった状態で1960年代に発見された。

 伊フェデリコ2世ナポリ大学(University of Naples Federico II)の法人類学者ピエル・パオロ・ペトローネ(Pier Paolo Petrone)氏は、噴火による極度の高温と、その後に起きた温度の急速な降下によって脳がガラス質へと本質的に変化した結果、神経細胞の構造が固化して完全な状態で保たれることになったと説明する。ペトローネ氏が筆頭執筆者を務めた論文は、6日の米科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」に掲載された。

 ペトローネ氏によると、脳組織のガラス固化は、噴火の間に発生する特徴の一つであり、温度の急速な降下が起きたことを示す証拠だという。そして、研究の成果については「将来起こる噴火の初期段階で、市民を守るための介入措置に有用な情報を提供できる可能性がある」と指摘した。

 ベズビオ山の噴火では、ヘルクラネウムを覆った火山灰や有毒ガス、溶岩流などから成る厚さ十数メートルの層がその後に石化して都市を包み込んだ。それにより、都市の構造と避難できなかった住民らの両方が、当時のまま凍結されたように極めて良好な保存状態で残されることになった。

 研究チームはこれまでの調査で発見された有機物質を詳しく調べる中、走査電子顕微鏡と高性能の画像処理ツールを使うことで、かつてない高分解能の画像を得ることに成功した。

 犠牲者の中枢神経系の細胞構造が噴火後に閉じ込められて保存されたことにより、研究者らは「考古学でおそらく最もよく知られた実例であり、並外れて保存状態の良い脳と脊髄の神経組織」を調べる機会を得たとプロスワン誌は指摘している。(c)AFP