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アントワープの「赤ちゃん」、市民と一緒に大気汚染調査

【2月26日 AFP】ベルギーのアントワープ(Antwerp)で友人と午後のハイキングに出掛けたフィーラ・ボナールス(Veerle Bonaers)さんは、ベビーカーを押す手を止めて地図を確認した。どうやら道を間違えたらしい。

 ベビーカーに乗っている赤ちゃんはおとなしい。人形だからだ。名前は「Clean Air for Everyone(きれいな空気をみんなに)」の頭文字をつなげたクレア(Claire)だ。三つのセンサーがクレアにつながれていて、工場や自動車から放出される粒子状物質を測定する。

 クレアを連れた2人は、アントワープ大学(University of Antwerp)のキャンパスから、ベルギーの悪名高い交通渋滞の横を、7.5キロ(約1万歩)を歩く。この交通量の多さが原因で、人口1100万人の小国ベルギーは、欧州で最も多く有害物質を排出する国の一つになっている。

 クレアを考案したアントワープ大学のルーラント・サムソン(Roeland Samson)教授は、大気汚染への暴露の度合いをより広範囲で測定するためにアントワープ市民を巻き込み、協力を得ている。

 サムソン教授はその日担当の市民らに指示を与えながら、「クレアと散歩したいという親や祖父母(世代の人々)が何百人もいる」とAFPに語った。

 多くの協力者がいることについて、教授は「大気の質はかなり変動するので、非常に重要だ。ある時刻に1件の測定だけでは、全体像は得られない」と説明した。

 クレアがベビーカーの中にいる間、すすなどの粒子状物質といった自動車関連の汚染が10秒ごとにチェックされる。風速や時間帯など他のパラメーターも記録される。

 クレアは11月まで毎日外出する予定。

■関わることで現状の理解も

 アントワープは北部フランデレン(Flanders)地域最大の都市で、その環状道路は欧州最悪レベルの渋滞で有名だ。

 フランデレン地域は広く都市化が進んでいる。多くのベルギー人が郊外の一軒家を夢見ており、住宅の建設が続いている。

 また、昇給の代わりに車と燃料費を社員に与えることが企業に奨励されるという、世界でも気前の良い社用車制度がある。

 欧州連合(EU)と経済協力開発機構(OECD)も批判しているこの社用車制度のせいで、混雑している道路に数十万台の、主にガソリンを大量消費する新型車が送り込まれている。ただし自動車メーカーは気候危機を理由に、変わり始めている。

 先のサムソン教授は、「人々がデータの構築を手伝ってくれれば、現状への理解を深めることができるし、自分たちでデータを作る」ことになると述べた。「それが、世界に口コミで伝わることにつながる」 (c)AFP/Alex PIGMAN / Clotilde GOURLET